宮城県は、東北地方で唯一の政令指定都市である仙台を有しています。そして宮城県にはその都市名のついた「仙台味噌」があります。和食に欠かせない調味料である味噌ですが、仙台味噌とはどのような味噌なのでしょうか。この記事では、仙台味噌の歴史を紐解きながら、その魅力に迫っていきます。
多くの人に愛される仙台味噌はいつからあるのか興味を引くものがあります。いつからその名がついたのか、時代背景について解説します。
仙台味噌はどのように生まれたのでしょう。仙台味噌の特徴とともに解説します。
仙台味噌の始まりは伊達政宗の時代にまでさかのぼります。政宗は、織田信長の朝鮮出兵に付き、韓国蔚山(うるさん)で戦いました。その時に持参した味噌が、他藩のものより傷みにくく変質せず味も優れていたことから、諸大名の間で評判となったそうです。政宗は他の武将に頼まれ味噌を分け与えたことで、一躍仙台味噌の名を上げたとのことです。その後1601年(慶長6年)、仙台城に移り住んだ政宗は、城下にある老舗商人のひとり、真壁屋市兵衛に筆頭を命じ、「御用味噌」の看板を許可しました。市兵衛は1626年(寛永3年)に仙台味噌の招牌(看板)を掲げました。
仙台味噌が伊達政宗により広まったことが分かりました。それでは仙台味噌はどのような特徴があるのでしょうか。他地域の味噌と比較してみていきましょう。
味噌には、原料、色、味、産地等さまざまな分類方法がありますが、今回は「原料による分類」についてご紹介します。 麹の種類による分類では4種類に分けられます。 1. 米味噌:大豆に米麹を加えてつくったもの。全国各地で生産。 2. 麦味噌:大豆に麦麹を加えてつくったもの。九州、四国、中国地方が主な産地。 3. 豆味噌:大豆のみを主原料としたもの。中京地方(愛知、三重、岐阜)が主な産地。 4. 調合味噌:複数の味噌や麹を混合して作られます。特有のクセがない穏やかな風味です。 塩分量による分類では3種類に分けられます。 1. 辛口味噌:塩分が12%前後で、一般的でオーソドックスな味噌。 2. 甘口味噌:塩分が10%前後で、辛口味噌より少し塩分控えめなマイルドな味わい。 3. 甘味噌:塩分が6%前後で、辛口味噌に比べ、塩分は半分程度の超甘口なテイスト。
仙台味噌は、米麹と大豆でつくられた辛口の赤味噌です。「なめみそ」とも呼ばれ、そのまま食べることもできるほど風味が高いのが特徴です。加熱処置をしていない「生味噌」の状態だからこその風味です。仙台味噌は出汁が必要ないほど濃厚な味わいをしていますので、調味料として用いられるのはもちろん、冷奴のトッピングやお酒のおつまみにもよく用いられます。
仙台味噌は、大豆と米麹からできている米味噌です。しかし、他の米味噌に比べて大豆の比率が高く、大豆の旨味が生きた爽やかな味わいが特徴です。辛口味噌ながら塩辛さを感じさせない「塩なれ」した旨味と香りを感じさせます。
仙台味噌は唯一無二の味噌であることが分かりました。果たしてどのように製造されるのでしょうか。ここから解説していきます。
先述しましたが、仙台味噌は大豆と米麹、そして塩からできている米味噌です。こだわりの材料と製造方法について説明していきます。
こだわりある原材料を使用して仙台味噌は作られています。お米は米どころ宮城の良質なものが使われ、米こうじは米から作る伝統的な製法を守っています。大豆は畑の肉ともいわれ、良質なたんぱく質を多く含み、発酵によってアミノ酸やビタミンが生成されるため、栄養的に大変優れた食品です。仙台味噌には選りすぐりの大豆を使用し、長期にわたり熟成させていきます。
製造過程で加熱処理をせず、発酵止め用のアルコールも使われていないのが特徴です。 職人が厳しく品質を管理し、一粒ずつ選別した大豆をじっくり圧力釜で蒸し上げ、おいしさを閉じ込めることで大豆のうま味を最大限に引き出します。それから、塩と米から製麹した米麹と混ぜ合わせ、発酵蔵で静かに寝かせます。
一般的に味噌を使った料理といえば、味噌汁を思い浮かべるのではないでしょうか。仙台味噌はどうでしょう。料理への活用について説明していきます。
仙台味噌を使用した代表的なレシピをご紹介します。
仙台味噌と砂糖、みりんを合わせ、おむすびの片面に塗ってトースターで焼きます。
仙台味噌と砂糖、酒、みりん、だし汁などで味噌ソースを作り、揚げた手羽先と合わせます。
仙台味噌、バター、小麦粉、牛乳、蒸し汁などでみそホワイトソースを作り、蒸した牡蠣と野菜の上に載せ、オーブンで焼きます。
仙台味噌は風味が高く、そのまま食べることもできますが、味噌汁に使用するとその風味が引き立ちます。辛口の赤味噌であるため、味噌汁も辛口に仕上がります。雑味がなくうま味が強い、煮干し出汁を使用することが多く、各家庭によって様々な具材を使用します。調味料としては、赤味噌独特の辛みを生かして、めん類などに使用されます。また、お肉やお魚を仙台味噌に漬けておくだけでも、食材の風味がよくなります。当店の「さばの味噌煮」には仙台味噌を使用しています。新鮮な海産物と仙台味噌との相性は抜群です。ぜひ一度、ご賞味ください。
美味しい仙台味噌は何を基準にして選べばよいのでしょうか。美味しさをキープできるおすすめの保存方法を紹介します。
樽売りの場合は色と香りで判断しましょう。硬く黒っぽいものや、大豆の匂いが残っているものは避けます。試食できる場合には「角がなく丸い味」の味噌が良質です。
味噌は空気に触れることで酸化し劣化が始まります。開封後はしっかりと密閉できる保存袋に入れておくのが長持ちのポイントです。味噌の保存用につくられた密閉容器もありますので、そういった容器を使うのもおすすめです。なるべく空気に触れないようにして、冷暗所に保管しましょう。使うたびに表面を平らにし、中に敷いてある紙やラップなどでぴっちり覆うのも保存のコツです。平らにすることで、空気に触れる面が少なくなり、劣化を防ぐことにつながります。
味噌の賞味期限は一般的に、麹と塩の含有量、その比率によって決まります。麹の量が少なく、塩分が多い場合や、長期間熟成された味噌の場合に、通常は賞味期限が長くなります。
宮城県には30店以上、味噌を作っているお店があります。おすすめのお店を紹介していきましょう。
味噌と醤油の製造、販売を行っています。伊達政宗の時代から400年以上の歴史と伝統を持っています。代表銘柄は「本場仙台みそ」。
参照:仙台味噌醤油株式会社
味噌の製造販売を行っています。1854年(安政元年)に四代目佐々木重兵衛が佐々重商店として創業した老舗の味噌屋です。代表銘柄は「淳朴味噌」。
参照:株式会社佐々重
1861年(文久元年)、仙台の職人町「立町」で創業した味噌屋です。宮尾登美子の小説「松風の家」にも登場しています。代表銘柄は「マルヒロ印本場仙台みそ」。
参照:合資会社 亀兵商店