東北最大の都市である仙台を有する宮城県は、雄大な自然を生かした農林水産業が活発です。そして豊かで清らかな水を用いて米作りも盛んに行われています。地酒の原料である酒米もその素晴らしい環境で育てられ、高品質な地酒へと生まれ変わり、県内外の愛飲家を唸らせています。この記事では宮城県における地酒の歴史を紐解き、その魅力に迫っていきます。
宮城県の地酒はどのような歴史の中で生まれ育ち発展してきたのかを解説し、代表的な酒蔵について紹介していきます。
そもそも地酒とはどのようなお酒のことを指すのでしょうか。宮城県における地酒の特徴とともに説明します。
特定の地域ごとに生まれた日本酒をその名の通り「地酒」といいます。その土地の文化に合わせ、その土地で育った米や水を用いて、その土地の蔵元で造られるため、銘柄ごとに個性豊かなお酒となります。デジタル大辞泉によると、昔からの産地であった兵庫県の灘や京都の伏見を除いた地方の日本酒を指して地酒と称されます。
宮城県における季節の特徴として、夏は「やませ」と呼ばれる湿った冷たい東風が吹く影響で、太平洋沿岸が日本海側に比べて低温となる傾向にあります。そして冬は北西から吹く季節風の影響で、日本海側では豪雪となりますが、太平洋側では乾燥した晴天が続き、積雪は多くありません。山間部に降り積もった雪は、ミネラル豊富で良質な雪解け水として豊富に海へと流れ込みます。それは酒造りには欠かすことのできない軟水であり、口当たりがまろやかな地酒へと生まれ変わります。昼間は日光が照ることで気温は上昇し、夜はとても涼しくなりますが、その寒暖の差が米作りには好条件となり、甘みの強い酒米を生み出しています。
宮城県における酒造りのルーツは江戸時代にまでさかのぼります。慶長9年(1604年)に、南部の亘理に住む武田源左衛門が、町酒屋として酒造を始めたことが最初となります。慶長13年(1608年)には、仙台藩の初代藩主である伊達政宗公により仙台藩の御用酒屋がスタートし、自らが縄張りとしたと伝えられています。政宗公は食通として知られていますが、特に酒をこよなく愛していたそうです。その後も時代を渡り、酒技術は磨かれ発展していきました。2011年の東日本大震災では、宮城県の酒蔵が大きな被害を受けましたが、国や県の支援により震災当時から現在に至るまで、1社も欠けることなく存続できています。
冒頭でもお話ししましたが、主原料である酒米によって地酒の出来は大きく異なります。ここではその酒米と歴史ある酒蔵について説明します。
宮城県は日本屈指の米どころですが、地酒に適した特別な酒米も育成しています。「蔵の香」は1992年に宮城県酒造組合が開催したフォーラムをきっかけにして、農業試験場と蔵元、酒米農家がタッグを組んで誕生した酒米です。穂の丈が短いため倒れにくく、寒さや病気にも強いことが特徴です。雑味の少ない爽快な味わいの地酒になります。「ひより」は2004年に宮城県の酒造好適米として認可された酒米です。宮城県石巻市を中心に生産されています。大吟醸酒用の酒米である「ササシグレ」と「山田錦」の交配種で、需要が高まっている品種です。
江戸時代から続く酒蔵が多く存在しています。創業が古い順に紹介します。 1. 内ヶ崎酒造店は寛文元年(1661)創業の宮城県最古の酒蔵です。主要銘柄は「鳳陽」。 2. 勝山酒造は元禄年間(1688)創業で、仙台で現存する唯一の伊達家御用蔵です。主要銘柄は「勝山」。 3. 大沼酒造店は正徳2年(1712)、江戸時代中期に創業を開始しています。主要銘柄は「乾坤一」。
宮城県ではどのような味わいの地酒が作られているのでしょう。合わせてよしの食材や料理とともに紹介していきます。
市販の日本酒だけを対象にした品評会「SAKE COMPETITION 2023」において、純米酒部門の第一位に輝いた大和蔵酒造株式会社の「雪の松島 海-KAI- ひとめぼれ 純米原酒」を始めとして、宮城県には魅力的な地酒が揃っています。
数多くの酒蔵で多種多様な地酒が作られています。ここでは宮城県内にとどまらず、全国各地で飲まれている地酒にスポットを当ててみます。 1. 佐浦の「浦霞」。米の旨みと香りが調和した、まろやかな味わいが特徴です。 2. 阿部勘酒造の「阿部勘」。食事を引き立たせる後切れの良さが特徴です。 3. 一ノ蔵の「すず音」。お米の優しい味と甘酸っぱさを表現した、低アルコールのスパークリング清酒です。
以前は料理の邪魔をしないものがよしとされてきましたが、今ではお酒も料理もどちらも楽しむ傾向が見られます。地酒は香味により、相性の良いとされる食材や料理の法則があるとされています。 薫酒:香りの高い大吟醸系や吟醸系。華やかでフルーティーな香りと爽やかでスッキリとした味わいが特徴。あっさりとした料理や、サラダ・フルーツなど素材そのものと相性良し。 熟酒:熟成された熟成酒系や古酒系。香ばしい香りと芳醇な味わいが特徴。料理も濃い味付けのものと合う。 爽酒:すっきりとした生酒や本醸造系。清楚な香りと軽快で端麗な味わいが特徴。脂っこい料理を除いた広範囲にわたる料理において高い相性を示す。 醇酒:コクのある純米酒系。控えめな香りとコクのある濃い味わいが特徴。しっかりとした味付けの料理と相性が良い。
実際に宮城県の地酒を購入し飲んでみたくなったのではないでしょうか。ここからは購入先や方法、選び方のポイントについて説明していきます。
酒蔵に併設されている直売所では試飲できるところがあり、味を確かめてから購入することが可能です。宮城県内の酒屋では、さすが地元ならではの品揃えで出迎えてくれますし、県外でも前述した銘柄を中心に販路は広がっています。
宮城県の酒蔵ではオンラインショップを開設している酒蔵があります。松島にある酒屋「株式会社むとう屋」では、宮城の日本酒専門店と銘打ちオンラインショップを開設しています。また、大手のECサイトでも販売していますので手軽に購入することも可能です。
選び方のポイントはたくさんありますのでぜひ参考にしてみてください。 1. 地酒の種類。純米酒、吟醸酒、大吟醸酒など。 2. ラベルに書かれた日本酒度などの情報。 3. ご自身の好きな味や香りを選択。 4. 地酒に詳しい店舗で店員に確認。 5. 趣向を凝らしたデザインをラベル買い。 6. ご贔屓の酒蔵や銘柄を選択。