海藻とは、海の中に生える藻類のことを言います。胞子によって繁殖し、茎・葉・根に分かれていないことが特徴です。多くの海藻は食べられるため、食用としてスーパーなどで販売されています。
日本人の食卓にも、馴染みのある食材であり、日常的に海藻を食する人は多いのではないでしょうか。平安時代の書物にも海藻に関する記述があるとされており、日本では古くから多くの人に愛されてきた食材だと言えます。
海藻は全部で「緑藻類」「褐藻類」「紅藻類」の3種類に分かれています。
3種類の違いは、海藻が生息する深さによって、日光を浴びる量が異なる点です。
種類ごとの特徴や代表的な海藻を見ていきましょう。
緑藻類は、3種類の中でもっとも浅い位置に生息する海藻です。
緑藻類の海藻は、葉緑体を多く含んでおり、光合成に必要な「クロロフィルa」と「クロロフィルb」を持っています。3種類の中では、もっとも陸上にある植物に近い構造です。
【代表的な海藻】
アオノリ、アオサ、カサノリ など
褐藻類は、クロロフィルのほかに、「フコキサンチン」と呼ばれる色素が多く含まれていることで、赤褐色となっています。また、「ひじき」などのように、黒っぽい色をした海藻が多いことも特徴です。褐藻類の中には、10メートルを超えるような長さの海藻もあります。
【代表的な海藻】
昆布、わかめ、ひじき、もずく など
紅藻類は、3種類の海藻の中でもっとも深い場所に生息します。クロロフィルのほかに、「フィコエリスリン」や「フィコシアニン」が含まれており、それぞれ赤と青の色合いを持った成分です。そのため、緑・赤・青の3色が交じりあうことで、紅色となっています。
【代表的な海藻】
テングサ、アサクサノリ、フノリ、オゴノリ
海藻には、多くの栄養成分が含まれていることが特徴です。
特にミネラルが豊富であり、その中でも、鉄やカルシウム、ヨウ素などを多く含んでいます。ほかにも、食物繊維が豊富に含まれていることも特徴です。
主な栄養成分の特徴を見ていきましょう。
鉄は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となります。
鉄が不足すると赤血球が十分に作られず、貧血などの症状を引き起こす可能性があるため、日常的な摂取が必要です。
また、貧血によって血が体内に届きづらくなるため、疲れやすくなるなどのデメリットもあります。
日常を健康的に過ごすためには、鉄の摂取が不可欠です。
【鉄を多く含む海藻の例】
ひじき、海苔、昆布、わかめ など
海藻の栄養成分は鉄や食物繊維が注目されがちですが、カルシウムも多く含んでいます。カルシウムと言えば牛乳のイメージが強い人もいるでしょう。しかし、多くの海藻は牛乳よりもカルシウムを含んでいます。
カルシウムは、骨や歯を丈夫に保つために効果的です。そのため、育ち盛りの子どもにもおすすめの食材だと言えます。
また、カルシウムはほかのさまざまな身体機能にも影響を及ぼします。たとえば、血液を固める効果や筋肉の収縮をスムーズにする役割を担っていることも、カルシウムの特徴です。
【カルシウムを多く含む海藻の例】
ひじき、海苔、昆布、わかめ、あおさ など
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの原材料です。新陳代謝を促進する効果や、子どもの成長ホルモンを活性化させる効果があります。
ただし、人間が1日に必要な摂取量は多くないため、過剰摂取にならないよう注意してください。
※ヨウ素の過剰摂取についての詳細は後述します
【ヨウ素を多く含む海藻の例】
昆布、わかめ、海苔
【食物繊維】
食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。このうち、海藻に多く含まれているのは、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」です。
水溶性食物繊維は、時間をかけて栄養素が吸収されるため、血糖値の上昇を抑える効果があります。
ほかにも、腸内環境を整える役割もあることから、大腸がんを抑制するなどの効果も期待されています。
●食物繊維を多く含む海藻の例
わかめ、ひじき、海苔、昆布 など
ではここからは、海藻が健康増進にもたらす効果を具体的に見ていきましょう。
海藻が健康に与える主な影響は、以下の4つです。
それぞれ、効果の根拠や具体的な内容を解説します。
海藻には、生活習慣病の予防効果があると言われています。
たとえば、海藻に多く含まれている成分のひとつである食物繊維は、血糖値の上昇を抑える効果があることが特徴です。実際に、福井県立大学の村上茂教授は、海藻のひとつである「アカモク」に、肥満や糖尿病を抑制する作用があることを、マウスを用いた研究で明らかにしています。
人間に対する効果はまだ研究で明らかになっていませんが、ポジティブな効果が期待できると言えるのではないでしょうか。
海藻は、暑い夏の日でもスルスルと食べられる点も特徴的であり、季節や人を選びません。そのため、幅広い人の生活習慣病予防に最適だと言えます。
【参考】
海藻「アカモク」の生活習慣病予防効果を初めて検証しました|福井県立大学
海藻に含まれている「フコキサンチン」には、内臓脂肪を減少させる効果があると言われています。フコキサンチンは、珍しい成分であるため、海藻はフコキサンチンを摂取できる貴重な食材です。
北海道大学大学院水産科学研究院教授の宮下和夫氏らによる研究では、海藻が肥満対策に効果があるという研究結果が出ています。
これらは動物研究のため、まだ人間の体に対する効果が明らかになっている訳ではありません。しかし、多くの研究者がフコキサンチンの内臓脂肪減少効果について研究を進めており、今後、効果が立証されることも期待できるでしょう。
海藻に含まれる「フコイダン」には、免疫力を高める効果があるとされています。
フコイダンは、メカブや昆布、もくずなどに代表される「ネバネバ成分」に多く含まれていることが特徴的です。
フコイダンには、マクロファージやNK細胞などの免疫細胞を活性化させる役割があります。そのため、ウイルスなどの侵入を防ぎ風邪を予防する効果や、花粉などのアレルギーを軽減させる効果も期待できます。
フコイダンを定期的に食事に入れることで、長期的な健康の保持増進につながると言えるでしょう。
海藻の嬉しい影響として、美容やダイエット効果もあります。
海藻に含まれる「フコイダン」には、抗酸化作用があります。そのため、肌の老化を防ぐメリットがあるのです。また、海藻には、「アルギン酸」という成分も多く含まれています。アルギン酸は肌を保湿する効果があるので、潤いのある肌を保つ効果が期待できます。
さらに、海藻は全体的に低カロリーなので、通常の量を食べるのであれば太ることはありません。脂肪の吸収を抑える効果もあるとされているため、ダイエットにも最適です。
海藻を健康的に食べるためには、いくつかの注意すべき点があります。
特に注意すべき点は、以下の2つです。
海藻は、過剰に摂取すると逆に体調を悪くしてしまう可能性があると言われています。
昆布やわかめに多く含まれる「ヨウ素」は、健康のために欠かせない成分ではあるものの、1日に必要な摂取量は多くありません。そのため、ヨウ素の摂り過ぎは、甲状腺の機能を低下させてしまう可能性があるのです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020)」によると、日本人成人に必要なヨウ素の摂取量目安は、1日で約0.095mg/日と言われています。
(出典:日本人の食事摂取基準p336|厚生労働省)
昆布には、100g(1枚あたり)で約1.7mgのヨウ素が含まれているため、2枚以上食べると過剰摂取となる可能性があります。そのため、1度に大量に食べないよう、適度な摂取を心がけてください。
海藻の栄養成分である「フコキサンチン」や「アルビン酸」は、熱に弱い性質を持ちます。そのため、海藻の健康効果を十分に得るうえでは、なるべく過度な加熱を減らすことが重要です。
たとえば、味噌汁に入れるときにはなるべく沸騰させないようにするなど、調理の過程で少し意識することで健康効果が高まるでしょう。
海藻には、ミネラルや食物繊維などのさまざまな栄養成分が含まれています。
健康増進への具体的な効果としては、「生活習慣病の予防」や「免疫力アップ」などです。本記事では、4つの健康効果を根拠とともに紹介しているため、ぜひ海藻を食べる際の参考にしてください。
なお、海藻の健康効果を高めるためには、本記事の最後に紹介した2つのポイントを押さえましょう。
海藻は、さまざまな健康効果を秘めた食材です。今後研究が進むことで、海藻が持つ健康増進の効果がさらに明らかになると見込まれます。
ぜひ、皆さまの食卓にも海藻を取り入れ、健康増進を目指してはいかがでしょうか。